本山式AMIによる測定で得られるデータとその意味


AMI(経絡臓器機能測定器) 詳細

3)測定波形の各部分の説明

(1)BP
 BPとは,両電極を通じて生体に外から電位を負荷したことにより,生体皮膚内を流れた電流値を示すが,この電流の速さは1μsec以上の速さであり、生体内の体液中の各種イオンの移動速度は20KCのACに追いつきうる速さ,つまり50μsec前後の速さにすぎない.従って外部電圧によって矩形波をかけ,1μsecの瞬時に流れる電流は,生体皮膚の体液イオンが移動して,外から負荷された電位に逆方向に分極電位を起こす前に流れる電流であるから,Before Polarization(分極前)電流と呼ぶ.
 この電流は、表皮、真皮を含めて、生体皮膚組織のもつ固有抵抗(ohmic resistance)によってその値が決まる.

(2)IQ
 BP電流が流れると,その直後から,生体皮膚組織中の(移動速度の速い)イオンが透明層及び基底膜の上下に分極を始める(図6).この分極によって表皮内,真皮内に生ずる電位は,外部からかける電位とは逆方向であるから,みかけの抵抗となって,外部電位による電流値を減少せしめる.それが下降曲線を形成する.分極形成のために移動したイオンの総量がIQの値である.IQは,BPからAPを引いた高さと,APの高さの底辺と下降曲線とで囲まれた面積の値である.


(3)TC
 イオンが移動して分極が始まるわけであるが,生体の皮膚組織のもつ抵抗と,その組織の体液中に含まれるイオンの種類,性状によって,イオン移動が速く起こるか,緩やかに起こるかする、その皮膚組織のイオン移動に対する抵抗が少なく,イオン移動の速度が速く,かつバリア膜上下に蓄まる電気容量が小であれば,下降曲線の傾斜は急となり,抵抗が大きくイオン移動速度が遅く容量が大であれば,下降曲線はゆるくなる.この下降曲線の傾斜率は,抵抗と容量の積(TC)をパラメーターとして表わすことができる.
 このTCは,生体皮膚のバリア膜の上下にある容量(コンデンサ)に,皮膚組織の抵抗に逆らってイオンが移動し,これを充電するに要する時間(時定数)であるから,TCが大きければ容量充電に時間がかかり,TCが小であると充電が早く終了することを意味する.

文献 註4)Frithjof、Hammersen著 岡本、藤田訳『実習、人体組織学図譜』医学書院刊
(4)AP
 生体の皮膚に通電すると,分極によって外部からかけた直流が遮断されることなく,BPの値の約1/30の直流電流が流れる.これは分極後もバリア膜を通じてイオンの拡散が少量ながら続いていると理解されている.その根拠の一つとして,表皮と真皮は透明層及び基底膜をバリア膜として,表皮側がマイナス電位、真皮側がプラス電位という分極を起こしている.ところが外からの通電,熱刺戟,あるいは軽く圧する等によって,膜のイオンに対する透過性が高まり,膜の上下のプラス,マイナスイオンが自由に透過し,刺戟部位の表皮部のマイナス電位が他の表皮部よりプラス電位になることが確かめられていることが挙げられる.通電によるこの膜の透過性亢進によって,分極後も僅かであるが二つの電極間に直流電流が流れる.これがAPである.

文献 註5)小嶋理一,三浦 修,清寺 真編集『基本皮膚科学I』医薬出版㈱刊

写真10 表皮真皮の構造(注5)