4)BP,AP,IQ,TCと皮膚組織との関係
(1)BPは皮膚組織のどこを流れる電気現象か(表皮を剥離する前後のAMIデータによる)
左右の足の肝経の原穴のそれぞれの上に,まず表皮を剥離しないで関電極を置き,左右の電極間に3VのDC電圧をかけると,約1330μAの電流が流れる(グラフ4).
右関電極側の表皮をスコッチテープで20回剥離すると,約1350μAの電流が流れる.左関電極側も20回剥離すると,約1600μAが流れる (グラフ5).
右側を更に20回剥離すると,約1750μAが流れ、真皮から血が滲む.これは基底膜が剥離されたことを意味する(グラフ6).
左側も更に20回剥離すると、1750μAが流れた(グラフ7).
以上のデータから,表皮を基底膜まで剥離しても(完全に基底膜がすべて剥離されたかどうかは疑問であるが),1750μA流れ、剥離しない場合でも,I330μAも流れる(グラフ8).表皮の有無は,BPの値に対して3割程度の影響をもつのみである.BPの値は7割が真皮によって決まる.これは表皮があってもなくてもBPは真皮を主として流れることがわかる.
表皮を除いた場合に,電流が真皮の内を流れるのは容易に理解できる.だが表皮のある時に,表皮のもつ抵抗によって電流量が3割ほど減少しても,大部分の電流が表皮内を貫通して真皮内に流れこむ経路は,汗腺等の皮膚付属器官を流れる経路,細胞を貫通する経路,細胞間隙を流れる経路等があるが(図7,図8),JanNyboer(1970,註6)等の言う如く,細胞を貫流する経路も大きいのであろう.
いずれにしろ,BPは主として真皮内を流れる電気現象であり,その値を決めるのは外部回路の負荷抵抗(100Ω),電極?糊間の抵抗(600Ω以下)と,表皮,真皮の組織のもつ固有抵抗(700Ω以上の抵抗)とによって決まる.生体内の固有抵抗は生体の状態によって異なる,これが診断上重要な因子となる.
この固有抵抗を決める生化学的因子としては,真皮結合織に含まれるNaCl,Sodium,Potassium,Calcium,Chloride,Collagen,Hyalronic acid 等があげられる。In vitroでのGelatin(溶けやすく変性したCollagen)濃度とBPの値をAMIで測定したデータは次の如くである。Gelatin濃度が高まるほど,BPの値が減少することがみられる(グラフ9).
文献 註6)Nyboer、J、Ann.N.Y.:“Acad、Sci、”170 p.415、 1970