IQ,TC,APも、今までの説明から,いずれも表皮内のバリア膜,表皮真皮境界の基底膜の上下に生ずる分極とかかわりをもつものであるから,主として外部からかけた電圧に対して表皮内で生ずる電気現象である.
三者は互いに相関関係が高いことが推測される.10人の被験者の左右28経絡のBP,AP,TC,IQの各々について相関係数を求めたところ(表1),BPとIQ,BPとTC,BPとAPの間には有意な相関がほとんどみられない.即ち,BP―APでは10人中10人相関なし,BP―TCでは10人中1人5%の負相関,IQ―BPでは10人中2人の相関,1%と5%しかみられない.
これに反し,AP,TC,IQの3者間には,10人中5人~8人で5%~0.1%の高い相関がみられた.
IQ―TCでは,10人中8人が正の相関を示した.これは,バリア膜の上下に集まるイオン総量が多いと,イオン移動に要する時間がより多くかかること,及びイオン総量が小ならば,イオン移動時間も小であることを意味する.
AP―TCでは,10人中5人がやはり正の相関を示す.れは、バリア膜の上下に生ずる容量と表皮内抵抗,極によって表皮,皮内に生ずる分極抵抗が増えると,Pが増加する,るいは,の容量と抵抗が小になると,Pは減ることを意味する.
ところで分極容量が大きく,皮内抵抗と分極抵抗が大なる時,Pが大となることは考えにくい.APが大となるには、表皮内抵抗か分極抵抗のいずれか一方が大となり,方は変わらないか小となるのでなければ、APは増加しないと思う.両抵抗の内,いずれが大となるのであろうか.極(容量)が増加するのであるから,極抵抗が増加すると考えるのが妥当と思われる.るとバリア膜の上下に移動するイオンは,極抵抗によってバリア膜を多くは透過せず,として表皮内をマイナス電極側に移動することが考えられる.って,Pは主として表皮内を移動するイオン流と考えられる.
次にTCが小さい時,つまり分極容量,表皮内抵抗,分極抵抗も小の時,APも小とならねばならない.これはどう考えるべきであろうか.容量が小さく分極抵抗が小,表皮内抵抗が小ならば、イオンが表皮内を流れ、バリア膜を貫通して真皮内を流れるのが容易となるから,外部電圧によるAP電流は増えてもいいと思われるのに、逆にAPが減るのは,流れるイオンの総量そのものが少ないと考えると、理解ができる.
いずれにしても,、APは表皮内と真皮内を流れるが,主として表皮内を流れるのであろう.
IQとAP間には10人中6人で正の相関がみられる.表皮内のバリア膜、表皮と真皮の境界にある基底膜バリアの上下に集まるイオンの総量が多い―分極と容量が大きい,分極抵抗も大となる―時は,APも大きい.バリア膜の上下に集まるイオンの総量が小さいと,APも小さいことを示す.このことは,APとTCの相関に関するところで推測したことと一致する.従って,AP―TCに関して推論したことは正しいと思う.又,IQ―TCのところの事実とも一致する.つまりバリア膜の上下に集まるイオンの総量(IQ)が大きいは時は,分極も容量(C)も大きく分極抵抗(R)も大きい.従ってCR=TCも大きくなる.しかもAPも大きくなるということである.
さて以上の考察を通して明らかになったことをもう一度確認すると,
② BPは主として真皮内を流れ,皮膚組織の固有抵抗(ohmic resistance)で決まること
② このBPは,主として表皮内及び表皮と真皮の境界のバリア膜の上下で生ずるイオンの集積(IQ)と,それによって生ずる分極(P),容量(C),分極抵抗(R)とは関係がないこと
③ これに対し,IQ,P,C,Rの間には密接な関係があること,APはこれらのfactorと相関 があり,APは表皮内,真皮内を流れるが,IQやTCが大きい時は主として表皮内を流れること
等が明らかとなった.
本山の考案したAMIは,以上のBP,AP,IQ,TCの四つのパラメーターを同時に測定し,生体皮膚組織の表皮,真皮の状態や,それらを流れる体液とそのイオンの性状を調べられる.各経絡についてのこれらの情報は,生体の全体の機能状況,各経絡の機能状況,各内臓の状態を正確に伝えてくれるのである.
補 遺
<改良型AMIにおける測定パラメーターの定義>
1.BP(Before Polarization):外部電圧に抗して皮膚内電解質が分極を生ずる前の電流値
2.AP(After Polarization):皮膚内電解質の分極現象が完了してからもなお流れている電流の値
3. IQ(Integrated Electrical Charge):
分極現象に関与したイオンの電荷の総量
4. TC(Time Constant):
分極現象の速さを示すパラメーター